一般に出回っている金山寺味噌のレシピでは、砂糖の量が多く、作るのを避けていました。
しかし、日本の食生活全集で各地方で作られている伝承のレシピを調べてみると、砂糖を使っていません。
すべてのレシピに共通するのは、醤油を作る工程が入ることです。
そこで、各地方に伝わる郷土料理のレシピを参考にした、醤油麹を使った金山寺味噌の作り方をご紹介します。
各地方に伝わる、金山寺味噌の作り方
日本の食生活全集によると、一般の家庭で金山寺味噌を作っていたのは、神奈川、静岡、愛知、滋賀、兵庫、和歌山、鳥取、山口、香川、愛媛などです。中でも、神奈川、静岡、愛知、兵庫、山口に伝わるレシピをご紹介します。
神奈川県に伝わる金山寺味噌のレシピ
神奈川県では、川崎、足柄山麓、小田原、相模川流域で金山寺味噌を作り、常食していました。
神奈川県相模川流域に伝わる金山寺味噌のレシピ
材料
小麦 3升
大豆 3升
塩 2~3合
種麹
作り方
小麦を半日水に浸す。
水気を切って、蒸す。人肌に冷めたら、種麹をつけてねかせる。(「小麦こうじ」ができあがる)
大豆は、鍋で香ばしくなるまで炒って石臼で粗く削り、皮を取り除く。
「小麦こうじ」と炒り大豆、塩2~3合を混ぜて、*味噌の豆を煮たあめ(*味噌や醤油を作る時に一緒に仕込む。あめとは、大豆を煮るときに出る豆乳のような煮汁と推測)をいれ、なすやうりの塩漬けを刻んで混ぜ合わせ、瓶に入れておおく。仕込んで1ヶ月くらいから食べられる。
神奈川県足柄山麓に伝わる金山寺味噌のレシピ
材料
大麦こうじ
秋なすの塩漬け
しょうがの塩漬け
作り方
大麦こうじに、秋なすの塩漬けとショウガの塩漬けを刻んで軽く塩出ししたものを混ぜ合わせる。
静岡県に伝わる金山寺味噌のレシピ
静岡では、金山寺味噌を「おなっとう」または「おなめ」などと呼んでいます。富士山麓、伊豆海岸、水窪などで作り、ご飯のおかずとして食べていました。富士山麓、伊豆海岸、岡部地方に伝わる金山寺味噌(おなっとう、または、おなめ)レシピをご紹介します。
静岡県富士山麓に伝わる金山寺味噌のレシピ
材料
なめ味噌用のこうじ(大麦、小麦、大豆の混じったこうじ)
作り方
かめに、なめ味噌用のこうじを入れておく。煮立てた湯に塩を湯飲み茶碗一杯入れて溶かし、少し冷ましてから、かめに注ぎ込んでかき混ぜる。
なすやきゅうりの塩漬けやしょうがを細かく刻んで入れておくと味がなめらかになる。
静岡県伊豆海岸に伝わる金山寺味噌のレシピ
材料
小麦 700
大豆 350
塩 200
なす、しょうが、うりなどの塩漬け 200
水あめ
作り方
小麦は粗くひいて3~4時間水につけておく。
大豆はよく炒って上から強く押してかきわり、熱湯につけて皮を除く。
小麦をざるにあげ、大豆を加えて少しおいてから、1時間あまり蒸す。
余熱の残っているところに少しこうじを入れ、一昼夜おく。
刻んだ野菜と塩、水あめを加えて紙に入れて軽く重石をし、冷暗所に置く。
一ヶ月位してから食べられる。
愛知県に伝わる金山寺味噌のレシピ
日本の食生活全集によると、愛知県では、西三河、東三河、奥三河地方で、金山寺味噌を作る風習があり、常食していました。
奥三河では、金山寺味噌を別名、「こず味噌」と呼んでいました。西三河地方と、奥三河に伝わる金山寺味噌のレシピをご紹介します。
愛知県西三河地方に伝わる金山寺味噌のレシピ
材料
金山寺こうじ(小麦と大豆を発酵させて作ったもの)
塩漬けなす
しょうが
作り方
金山寺味噌に塩漬けなすとしょうがを刻んで混ぜ、漬け汁も加えて混ぜ込む。
静岡県岡部地方に伝わる金山寺味噌のレシピ
材料
大豆 1升
米 1升
押し麦 1升
塩 3合
とうがん、なす、しょうが、しその葉
作り方
米と麦を3~4時間水につけておく。
大豆を炒ってから、枡の尻で叩いて二つ割りにする。大豆の皮を除いてから、水につけて湿らす程度にする。
米、麦、大豆を混ぜて、一時間ほど蒸す。
蒸したものが人肌くらいに冷めた頃、種こうじを入れてよくかき混ぜ、文字箱に入れて広げる。
下にござむしろを敷いて、もち箱は重ねる。この上に布団をかけ、中に湯たんぽを1個入れて3~4日おけば、こうじができあがる。
こうじの花がよく出たものに、野菜類を一晩塩漬けしたものを細かく刻んで水気を切ってから、水を1升ほど加えてたるに入れて、よくかき混ぜて仕込む。
6ヶ月ほどすれば、野菜と味噌がよくこなれて風味の良い「おなめ」となる。
愛知県東三河地方に伝わる金山寺味噌のレシピ
材料
小麦(大麦も混ぜて)5升
種こうじ
塩 2升
水 3升くらい
作り方
小麦をよく洗って6時間くらい水につけておく。大麦(丸麦)を混ぜるときもある。
麦の水を切って、せいろに入れ、40分くらい蒸す。
粗熱を取って、稲こうじ(種こうじ)をすりつける。これをもろふたにむしろを広げた上にのせ、うえにもむしろをかけて重ねておく。
1日経ってからかき混ぜると、麦の粒が白くなりかけている、昼ご飯を食べて3時頃、もう一度かき混ぜると三日目に青や白黄のかびがきれいについたこうじができる。
外に出して、冷ます。
桶に塩水を作っておき、こうじを入れてかき込む。
なす、にんじん、みょうがの子、塩漬けしておいた野菜を細かく刻み、水気をよく切って混ぜこむ。水気が多いと酸っぱくなる、
1週間に一度くらいかき混ぜる。1ヶ月くらいで食べられる。
兵庫県に伝わる金山寺味噌のレシピ
兵庫県では、丹波篠山地方と淡路で金山味噌を作り、食べる風習が残っていました。
兵庫県丹波篠山地方に伝わる金山寺味噌のレシピ
材料
裸麦
炒った大豆
米麹
しょうゆ作り方
裸麦と炒った大豆を混ぜて蒸して壺に入れる。
人肌に冷めてから米麹を混ぜて醤油をひたひたに入れておく。
きっちりふたをして1ヶ月ほどしてから食べ始める。
兵庫県淡路地方に伝わる金山寺味噌のレシピ
材料
小麦
種こうじ
塩漬けのなす、きゅうり、うり等
作り方
小麦を蒸して種こうじをつけ、黄花が咲くまでねかせておく。味噌ができたら、塩漬けのなす、きゅうり、うり等を細かく刻んで入れる。
山口県に伝わる金山寺味噌のレシピ
山口県では、萩地方で金山寺味噌を作り、食べる風習がありました。
山口県萩地方に伝わる金山寺味噌のレシピ
材料
小麦 3升
大豆 8合
塩 2合
こうじの素(種こうじ)
作り方
小麦は、一晩水につける。
大豆を炒り、板か麺棒でゴロゴロと押して挽き割り、皮を除く。
一晩漬けた小麦を蒸し、大豆と混ぜる。
種こうじを混ぜてねかせる。
こうじができたら、塩とひたひたより少なめの水を混ぜ、瓶に入れる。
2~3ヶ月で食べられる。
醤油麹を利用した驚くほど簡単な金山寺味噌の造り方
小麦と大豆を蒸して麹で発酵させるプロセスは、表現とやり方、分量など若干の違いはありますが、どの地方のプロセスにもあります。そこで、醤油麹を仕込むときに、野菜を刻んで一緒に発酵させてみることにしました。
野菜は、少し酸っぱくなってしまった古漬けバージョンと、生野菜バージョンの2種類を作ってみました。
古漬けと醤油麹のバージョンで金山寺味噌を作るレシピ
材料
古漬け
米麹
醤油
作り方
古漬けの分量を量ります。
古漬けを刻みます。
古漬けの量と同じ米麹を古漬けに加えて混ぜます。
古漬けの量と同じ醤油を、米麹と古漬けを混ぜた中に加えて混ぜます。
毎日かき混ぜます。
出来立て1日目
2日目の様子。
まとめ
ほとんどの地方の金山寺味噌のレシピは、砂糖などを使っていません。
「水あめ」を使う地方もありました。
野菜はこうじで分解されると、とどんどん甘くなります。
この自然の甘さを最大限に引き出して味わうには、砂糖は不要なのかもしれませんね。