なすを長期保存する知恵として、「なすの塩漬」を行っていました。
真夏から秋にかけてたくさん獲れたなすを、塩漬けすることで、野菜が収穫できない冬から春にかけて塩漬けしたなすを料理に利用してきました。
日本各地に伝わる「なすの塩漬」のレシピをご紹介します。
各地に伝わる、長期保存するための「なすの塩漬」のレシピ
「なすの塩漬」は、地方によって名称も変わります。
例えば、青森では、「奥漬」、宮城県阿武隈山稜、山形県村山盆地、福島県会津地方などでは「なす漬」、新潟では、「大漬」、滋賀県では「なすの塩切り」、石川県白山山麓地方では「塩なす」と呼びます。
名前が違っても、できるものは、長期保存の利く、「なすの塩漬」です。
岩手県県央地方に伝わる「なすの塩漬」のレシピ
材料
なす
塩
水
作り方
あまり大きくないなすを選んで、ヘタをつけたままきれいに洗ってざるに上げて水を切ります。
水を切ったなすを、桶にすき間の無いように入れていきます。
鉄鍋に塩水を煮立て、冷めてからなすの上にかけて重石をします。
一晩おくと、水が上がってきます。水がよく上がったら、重石を軽くします。
なすの色があせてきたら、漬け汁を鉄鍋に移し、火にかけて煮ます。
漬け汁が冷めてから、再びなすにかけます。
宮城県阿武隈山稜に伝わる「なす漬」のレシピ
材料
なす
塩
くぎ
なすを畑から採ってきたらすぐに、ヘタを取ります。
切ったヘタと釘を、しょっぱいくらいの塩水に入れて、一度に立てて冷ましておきます。
水気を切ったなすを桶に入れて塩をふり、桶をゆすりながらよくもみます。
桶にすき間の無いようにきっちり並べて重ねていきます。
ここへ、冷ましておいた塩水をヘタと釘を取り除いてかけます。
押しフタをして、重石をして漬けます。
福島県会津地方に伝わる「なす漬」のレシピ
材料
なす
塩
水
焼きミョウバン
作り方
塩水を煮立てて、火から下ろして焼きミョウバンを加えます。
ヘタを取ったなすを桶に入れ、塩をふり、押しフタをして重石をします。
埼玉県川越商家に伝わる「なすの塩漬」のレシピ
材料
なす
塩
水
作り方
鉄鍋に水と少し多めの塩を入れてよく煮立てます。
なすを水洗いした後、水気を拭きとります。
塩水を冷まして鉄鍋に入れます。
なすをそのまま入れ、重石を置きます。
鉄鍋で保存すると、鍋の鉄分でなすの色がきれいに仕上がります。
石川県加賀潟地方に伝わる「なすの塩漬」のレシピ
材料
なす
塩
ミョウバン
作り方
振り塩をして手でも見つけてから桶になすを漬けていきます。
ミョウバンと塩水を加えるとなすの色がよく仕上がります。
山梨県甲府盆地に伝わる「なすの塩漬」のレシピ
材料
丸なす 1.2キログラム
塩 212グラム
水 120グラム
作り方
まず、下漬をします。
下漬は、 塩を分量の1/3(70グラム)くらい使います。
濃度1%の塩水を鉄鍋で沸かして、火を止めて冷ましておきます。
樽に、なすと塩を交互に漬け込みます。
冷ました塩水を入れます。
こうすることで早く漬け汁が上がるようになります。
サランラップをして、板を置き、重石を乗せます。重石がないので、500ミリリットルの水を3本乗せました。
下漬してから10日間後くらいに、本漬を行います。
下漬したなすの漬け汁を切り、再び残りの2/3(142グラム)の量の塩で漬け込んでいきます。
長野県安曇平に伝わる「なすの塩漬」のレシピ
材料
なす
塩
水
古釘
作り方
塩水を煮立てて、冷まします。
塩水に古釘を入れて、握りこぶしくらいの大きさのなすを漬けていきます。
一度漬けたなすを全部食べたら、漬け汁に塩を足して、煮返して新しいなすを漬けていきます。
長野県伊那谷地方に伝わる「なすの塩漬」のレシピ
材料
なす
塩
水
作り方
鉄鍋に塩水を煎じて、金属臭を取り除きます。
塩水の入った鉄鍋に、なすを漬け込んでいきます。
塩水を時々煎じ直して使っていくと、塩の節約になるし、色もきれいに浸かります。
まとめ
「なすの塩漬」のなすと塩の割合について記録しているところがほとんどなかったため、詳細に記載してあった、山梨県甲府盆地のレシピを参考にしました。
塩漬けすると、なすの色があせてしまうため、きれいな色を出すために、ミョウバンや釘を使うところが多いようでした。
鉄鍋を使うことで、流れ出た鉄分が釘と同じ役目をしているために、きれいな色に仕上がるという記録がありました。
冷蔵庫のない時代に、なすなどの傷みやすい野菜を長期保存し、仕上がりの色合いにまでこだわって工夫していたようでした。