長野県善光寺平に伝わる「丸なすのおやき」のレシピをご紹介します。
長野県善光寺に伝わる郷土料理「丸なすのおやき」のレシピ
材料
小麦粉 200グラム
水 100~150ミリリットル
なす 2本
味噌 80グラム
ごま油 小さじ1
酒(みりん)小さじ1
作り方
日本の食生活全集・長野県に掲載されていた「丸なすのおやき」の作り方は下記の通りです。
一人分およそ二合あてぐらいの小麦粉に水を加えてよくこねてまとめ、濡れ布巾をかけて3~4時間置く。急ぐときは、ぬるま湯でコネをこねると、一時間ほど寝かすだけでよい。
一握りほどの大きさにちぎって、丸なすのあんを包む。
あんにする丸なすは、一人二個の見当で用意し、皮をむいて三分ほど(1センチ)の輪切りし、水に放してあくを抜く。
これをざるにあげて水切りし、厚みの真ん中に包丁を入れ、切り離さないようにして、その間に油味噌(味噌煮油を少し入れて混ぜたもの)を挟む。これを皮で包んで、ほうろくで両面を焼く。
焼けたものをさらにいろりのわたしの上にのせ、おきでじゅうぶん焼く。引用元: 「日本の食生活全集・長野県」
実際に作った「丸なすのおやき」
小麦粉に水を少しずつ足しながらこねます。
手に粉がつかず、しっとりした感じの生地になったら、3時間ほど寝かせます。
*急ぎの時は、小麦粉に入れる水をぬるま湯にします。ぬるま湯だと寝かせるのは、1時間くらいです。
油味噌を作ります。味噌とごま油、酒(甘くしたい場合はみりん)を混ぜ合わせます。
なすを、幅1センチくらいに輪切りにします。
なすの真ん中くらいに包丁を入れ、切り離さないようにします。
なすの切り目に、油味噌を入れます。
生地を寝かせて3~4時間(ぬるま湯でやったら1時間)経ったら、8等分くらいにして、丸めて薄くのばします。
薄くのばした生地に油味噌を入れたなすを入れて、包みます。
蒸し器で20分ほど蒸します。
焼き目を入れたかったら、蒸した後に、オーブンやオーブントースターまたは魚グリルで焼きます。
できあがり。
味
中のなすがとろりとして、油味噌と合わさり、何個も食べても飽きない味でした。
善光寺周辺の暮らしと、おやき
善光寺周辺では、おやきはお寺や農作業では、なくてはならないものでした。
春の彼岸の入りの日と、お中日と明けの日
彼岸の入りの日、お中日。明けの日は、米粉で団子を作って仏前に備えます。
お中日には、ぼた餅をつくり、明けの日には、おやきをつくって供え、墓参りや寺参りをしました。
宵の祭りと本祭り
4月19日の宵祭りの20日の本祭りで村中が活気づく。嫁に出た娘は叔母が泊まりがけできて、賑やかな一夜を過ごしました。
19日の夜は、おやきをつくり、雪菜に、車麩やちくわの入った煮ものに、ごまあえなどのごちそうを添えます。
男衆は酒を酌み交わして楽しみ、翌朝は、ヨモギを入れて草餅を搗いて、小豆あんやきなこをつけて、娘の婚家先へのみやげにしました。
田植え後
田植えが終わると、日を決めて一斉に農休みをとります。農休みは、田植えでからだの芯まで疲れているので、よい休養になっていました。農休みの一日目の夕飯には、ぼた餅を作って食べ、二日目の夕食には、おやきを食べて、ゆったりと過ごしていました。
うらぼんの入り
毎年7月31日を「うらぼんの入り」といい、この日から盆の行事が始まります。
善光寺大念仏の日には、午後からこの丸なすのおやきをつくり、重箱に詰め、夕方それを持って家族で善光寺へ行き、本堂でおこもり(夜明かし)をする習慣のある家もありました。
8月1日の朝も、おやきをつくりました。仏壇に供え、朝食に家族そろっておやきを食べるのが習わしでした。
盆の間
迎え盆の日から16日の送り盆の日まで、盆の間中は、三度三度変わったものをつくってお供えするようにしていました。
おやき、おこわ、ぼた餅、冷やむぎなどを主に作っていました。
風祭り
9月1日は風祭りがあります。二百十日頃の台風襲来を沈め、豊作を祈願して、家ごとで神に祈る。おやきをつくり、秋蚕を買っていない家は、この日を農休みにしました。
9月の末の秋祭りの日々の振る舞いには、秋なすのをあんにしたおやきをつくり、おこわを炊いていました。
鎌入れ
十月、稲の刈り始めの日を「鎌入れ」といって、おはぎ、おやき、煮ものなどのごちそうをつくって祝いました。
まとめ
長野県では、善光寺平周辺以外の地域でもつくって食べる習慣がありました。同じ県内の「おやき」でも、地域によって作り方が違います。
他の地域のおやきのレシピも、紹介していきます。