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いわしの塩辛は魚醤としても仕込む、郷土料理として各地に伝わる作り方・レシピ

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いわしの塩辛は魚醤としても仕込む、郷土料理として各地に伝わる作り方・レシピ

いわしの塩辛は、「日本の食生活全集」では、福井から西、京都、三重、山口、兵庫、佐賀、熊本で掲載されていました。
一匹丸ごと漬ける塩辛から、はらわたと頭を取り除いたもの、はたわたと頭を使ったものなどありました。
いわしなどの魚を半年くらい漬け込み、魚醤として利用していた地域もありました。

いわしの調理別にそれぞれのレシピをご紹介します。

いわしの塩辛、調理法の違いによるレシピ・作り方

いわしの塩辛は、いわしを丸ごと使うものから、頭とはらわたを取り除いて調理するもの、取り除いた頭とはらわたを使うものがありました。

いわしを丸ごと一匹使った、いわしの塩辛のレシピ

いわしを丸ごと一匹使ったレシピは、三重県志摩海岸、京都府丹後海岸、兵庫県淡路、明石、佐賀県玄界灘海岸、熊本県天草で作られていました。

三重県志摩海岸に伝わる、いわしの塩辛レシピ

この地方では、塩辛のことを「しょから」と呼んでいます。
魚を一匹丸ごと漬けるものと魚の身を除いた、はらわたなどを漬けるものとがありますが、
いわし、さんま、たかべは頭が付いたままで漬けます。

材料

いわし

塩 いわしの量の20パーセント以上

作り方

桶に魚の一段目を並べて、姿が見えなくなるほど塩をふり、また並べて塩をして重ねていきます。

桶が一杯になると、もう一度上にたくさん塩をふります。

ふたをして重石をしておくと、いったん汁があがってきます。その汁は捨てて、もう一度塩漬けします。

塩の量は食べる時期に合わせます。暑い時期は塩を多く、寒い時期は減らしています。

いわしの塩辛は、秋に漬けることが多ですが、少なくとも一ヶ月は漬けておきます。

漬け込んで日が経つと、魚に白い粉が吹いてきます。その粉が吹いた状態がもっとも美味しく食べられます。

いわしの塩辛は、頭ごと食べます。
さんま、たかべ、むつは切って骨を出してから食べます。

塩辛は、焼いて食べることもあります。

京都府丹後海岸に伝わる、いわしの塩辛のレシピ

この地方では、いわしの塩辛を醤油の代用として使われ、各家庭では、毎年二斗桶いっぱ(36リットル以上)作り置きしてきました。

材料

いわし

塩 いわしの量の20パーセント以上

作り方

生きのよいいわし(まいわし、かたくちいわし)の頭、内臓を取り除いてから海水できれいに洗います。

洗ったいわしを塩漬けにします。

塩はいわしが見えなくなるほどたっぷりと使います。

頭をつけたまま漬けることもあります。

この塩辛は、野菜の煮物の味付けに使うほか、夏場の魚の少ない時期には、水に浸けて塩出ししてから魚だけを焼いて食べることもありました。

兵庫県淡路に伝わるいわしの塩辛のレシピ

秋9月ころにたくさんとれるじゃこ(かたくちいわし)で塩辛を作りす。

材料

いわし

塩 いわしの量の20パーセント以上

作り方

ほとんどの魚料理は新鮮であればあるほどよいですが、塩辛だけは、近くの氷屋で買った氷の上に一日ねかせて少々古くした物を使います。

一日ねかせたいわしを壺に入れ、2割くらいの塩をまぶして密封して重石をしておきます。

20日くらい経つと、はらわたが発酵して熟成します。

熟成したいわしから重石をとってかき混ぜます。汁が魚の身にしみとおります。

塩が多すぎても発酵しませんし、少なすぎると腐りやすくなります。

できあがったいわしの塩辛は、すだちをそえて酒の肴に出すと喜ばれます。

正月を過ぎる頃まで食べられ、暖かくなると腐ってしまいます。

兵庫県瀬戸内沿岸、明石に伝わる、いわしの塩辛のレシピ

材料

いわし

塩 いわしの量の20パーセント以上

作り方

かたくちいわしは洗って水気をきれいに取り、頭をつけたまま、塩をまぶしながらかめに漬け込んでいきます。

いわし一升に塩1合くらいの割合になります。

一番上には塩を多めにして竹の皮で押さえ、押しぶたをして、上に重石を置きます。

水が上がってくるまでそのままにしておきます。

塩が多すぎるといわしが固くなり、塩が少ないとやわらかくなり、いたみやすくなります。塩加減が難しい料理です。

塩辛は大変塩辛いですが、魚がないときに取り出して食べたり、農家からのお客に酒の肴に出したり、みやげにあげたりすると浜の味だと言ってとても喜ばれます。

長い間漬けこんで、固くなったいわしを、大根の輪切りと煮ることもあります。いわしの塩味でほどよい辛さとうまみが出て大根とよく合います。

佐賀県玄界灘沿岸に伝わる、いわしの塩辛のレシピ

材料

いわし

塩 いわしの量の10パーセント以上

とうがらし(または、さんしょう)

作り方

かたくちいわしの一割の塩とこしょう(とうがらし)またはさんしょうを混ぜて、かめに漬け込みます。

わらを上にのせ、重石をかけます。

五日位したら食べられるようになります。

そのまま食べても良いですが、酢を絞ってかけるとさっぱいした味になります。

いわしの塩辛は、秋から冬にかけてつくります。

熊本県天草に伝わる、いわしの塩辛のレシピ

材料

いわし

塩 いわしの量の20パーセント以上

作り方

いわし(かたくちいわし)は、塩水できれいに洗って水切りをしておきます。

楕円か四角でふたの付いた専用のさかな桶にいわしを一並べずつ並べ、塩をたっぷり(いわしの三割ほど)ふりながら段々に漬け込みます。

漬け終わったら、おとしぶたまたははらわたをかぶせて重石を乗せ、涼しいところで二週間ほど寝かせておき、その後はぼちぼち食べます。

出来上がったいわしの塩辛は、そのまま酢をつけて頭から食べたりぬたあえにしたり、また、しばらく酢に漬けてしめて食べたり、大根なますに入れたり、そのまま焼いて食べるなど、そのときの好みで料理をします。

山仕事の弁当の菜に持って行き、焚き火で焼き丸ごとかじるのは、なによりのごちそうでした。

いわしの頭とはらわたを取り除いて作る、いわしの塩辛のレシピ

いわしの頭とはらわたを取り除いて作るいわしのレシピは、京都、山口、佐賀などで作られていました。

京都府丹後海岸に伝わる、いわしの頭とはらわたを取り除いた、いわしの塩辛のレシピ

いわしの頭とはらわたを除いた後は、いわしを丸一匹使った調理方法とほとんど変わりません。
いわしの塩辛を丸一匹使った調理はこちら→

山口県大島に伝わる、いわしの塩辛のレシピ

この地方では、小いわしなどの雑魚がたくさん手に入ったときには、一度に食べきれないので干物か塩辛にしていました。

材料

いわし

塩 いわしの量の20パーセント以上

作り方

いわしの頭とはら(はらわた)をのぞき、たっぷりの塩で漬けます。

ところどころに大根やなすびを切って入れ、重石をしておき。2,3日中に食べきります。

山で仕事があるときに持って行き、焼いて食べると弁当のおかずにちょうど良かったようです。

一緒に漬けた大根やなすびは、生のままでも食べられますが、魚くさいので焼いてから食べていました。

山口県北浦海岸のいわしの塩辛のレシピ

材料

いわし

塩 いわしの量の20パーセント以上

作り方

いわしは、頭とはらわたをとって、洗い、丸ごと塩をまぶしながらかめに漬け込みます。

いわしと塩は、段になるように重ね、最後に落とし蓋をします。

上に重石をのせて更にふたをし、目張りをして漬け込みます。

春に漬け込み、夏を越すとうまみが出てきます。

佐賀県玄界灘の、いわしの頭とはらわたを取った、いわしの塩辛のレシピ

佐賀県玄界灘の、いわしの頭とはらわたを取った、いわしの塩辛のレシピはこちらでご紹介しました。

いわしの頭とはらわた、アラを使った、いわしの塩辛のレシピ

いわしの頭とはらわたを使ったいわしの塩辛は、福井地方では、魚醤として醤油の変わりの使われてきました。

福井県若狭湾に伝わる、魚醤のレシピ

この地方では、いわしの塩辛と言えば、魚醤のことを言います。

材料

いわしの頭、はらわた
塩 いわしの量の20パーセント以上

作り方

さばやいわしがたくさんとれて塩漬けにするとき、取り除いた頭やはらわたなどのあらを桶に入れ、水ははたわたから出るので加えず、塩をきかして一夏越させます。

いわしの頭とはらわたを瓶に入れたところ

いわしの重量の20%の塩をかけた状態

1日くらい経つと、水が出てきます。

一夏過ぎた頃には、いわしの頭やはらわたが、十分に発酵してどろどろの魚醤ができます。

塩は経験の自分量、少しぐらい辛い方が持ちが良いようです。

この料理を塩辛と呼び、そのままはしの先に付けて、魚のさかなやごはんのおかずに、ねぶるていどに食べる人もいます。

しかしほとんどの家では、そのどろどろの魚醤を布袋でこしてから食べます。

食べ方は、へしこのぬかを食べるのと同じ方法で、あわびの殻や缶詰の空き缶などに塩辛、大根、ねぎなどを刻んで入れ、ゆるりの火で煮ます。

へしことは、青魚のぬか漬けです。
へしこのぬかは、ぬか漬けとは別の味がして美味しいです。

この塩辛を、お嫁さんは里帰りのときに実家などに持って帰ります。
桶に入れて担ぎ棒で担いでいきます。

当時(明治から大正くらいの時代)は。塩辛一升を白米一升と交換することができました。

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